硬膜移植による感染というとクロイツフェルト・ヤコブ病を思い浮かべますが、アミロイドアンギオパチーも硬膜移植による感染があるようです。アミロイドアンギオパチーの方が有病率は高そうですので、特に若年のアミロイドアンギオパチーの方を見た時には手術歴がないか病歴を確認するのも大事かもしれません(作田先生より)。 Clinical-radiological presentation and natural history of iatrogenic cerebral amyloid angiopathy. Fandler-Höfler S, Kaushik K, Storti B, et al. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry Published Online First: 12 February 2025. doi: 10.1136/jnnp-2024-335164.
多発性硬化症の治療戦略は効果の高い疾患修飾薬(DMT)を早期から開始するearly high efficacy therapy(eHET)が標準治療となりつつあります。しかし、同じ病状であっても、医師毎、施設毎、地域毎で、必ずしも同じDMTが用いられるとは限らないのが現状です。この研究では、カナダ・アルバータ州において、社会経済的状態及び地域差が患者のDMTおよびHETの導入機会に与える影響が解析されています。結論として、地方は都市に比べてDMTを受ける可能性が17%低く、この格差の39%は低い社会経済的状態に関連していました。また、地方ではHETを提供される可能性が26%低く、この格差のうち、社会経済的状態の影響は1%未満でした。社会的経済状態や地域差が、MSの治療に影響を及ぼすことの無い様、社会経済的状態の低い患者への支援、医療アクセスの向上(遠隔医療の活用や地方の医療インフラ整備、専門医の育成)、eHETの重要性に関する啓発活動の強化が求められていると考察されています。アメリカではなく、本邦と同様にユニバーサルヘルスケア制度を持つカナダにおいてもこのような傾向があることは興味深いです。本邦の場合は全国的に神経免疫専門の施設が存在している印象ですが、全ての患者さんが有用な情報の取得機会を失わないよう支援をしていく必要があります。(神経免疫チームより) Inequities in the Use of Disease-Modifying Therapy Among Adults Living With Multiple Sclerosis in Urban and Rural Areas in Alberta, Canada. Balcom EF, et al. Neurology. 2025 Feb 11;104(3):e210251.
頚部脳動脈解離に対する血管内治療のデータはこれまで乏しかった印象がありましたが、今回Neurologyに掲載されました。NIHSS>6の重症例では転帰改善効果があるというイメージ通りの結果でした。日本では後方循環の解離が多いため、そうした症状がNIHSSで反映されにくい可能性がありますが、重症の脳動脈解離に対する血管内治療を行う一助になればといいなと思いました。 (脳卒中チームより) Functional Outcome in Patients With Carotid Artery Dissection Undergoing Thrombectomy or Standard Medical Treatment | Sykora, M et al. Neurology. 104. e213465.