Blog/ブログ

Blog/ブログ

HOME > ブログ一覧 >

5月の論文紹介まとめ

  • 研 究

医局SNSでは適宜論文紹介を行っております。紹介する論文は、新しい論文で医局員がオモシロイと思ったものです。
5月に紹介された論文を、コメント共に紹介します。
ご興味ある方はぜひご一読ください。

1.Intensive Versus Standard Blood Pressure Control After Endovascular Thrombectomy in Acute Ischemic Stroke: A Meta- Analysis of Randomized Controlled TrialsHashmi TM, et al. J Am Heart Assoc. 2026 Apr 21;15(8):e045503.
doi: 10.1161/JAHA.125.045503.

EVT後の血圧管理はアウトカムを左右する重要因子です。AHAの最新のガイドラインではEVT後最初の24時間の収縮期血圧(sBP) ≤180 mmHgが推奨されています。本試験は、EVT後の血圧管理に関して厳格降圧(sBP<130–140)と標準管理(sBP<180)を比較したRCT(6試験)のメタ解析です。
結果、excellent outcome(mRS 0–1)はOR 0.91で有意差なし、good outcome(mRS 0–2)でOR 0.70でむしろ予後が有意に悪い結果となりました。死亡はOR 1.21 で有意に死亡率上昇となった一方、症候性出血(sICH)はOR 1.19で有意差なく、血圧低下に伴うイベントはOR 2.49と有意に増加しました。
この話題はメタ解析の違いが面白いです。年代順にみていくと2022年の観察研究ベースのメタ解析では、血圧が高いほど予後不良で死亡が増加したという結果がありました。2024年のRCTと観察研究が混在したメタ解析では、functional outcome:差なし、sICH:差なし、でしたが、研究デザインが混在、BPターゲットがバラバラ(120,140,160)、患者背景の違い、治療タイミングの違いなど、異質性が非常に高い(I² 78%)内容でした。今回のJAHAの論文は、ENCHANTED2MTなどが追加され統計的パワーがあがりました。転帰良好低下だけでなくアウトカムの明確な悪化まで示されました。下げすぎは危険がほぼ確定し、現在のガイドライン<180mmHgを裏付けた結果です。
当初の論文で示された結論が、研究が進むことでひひっくり返るという大変示唆に富む話題でした。
(strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.125.045503?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

2.Safety and efficacy of the anti-α-synuclein monoclonal antibody amlenetug for the treatment of patients with multiple system atrophy (AMULET): a phase 2, randomised, double-blind, multicentre trial.
Kjærsgaard L, Wiedemann J, Singer W et al. Lancet Neurology, 2026; 25, 560-570

多系統萎縮症に対する抗αシヌクレイン抗体 amlenetug の第2相臨床試験の結果が報告されました。
多系統萎縮症(MSA)の治療は、現在も対症療法が中心であり、進行を抑える治療法の開発が大きな課題となっています。
本論文では、病気の進行に関与すると考えられている異常なαシヌクレインを標的とする抗体薬amlenetugの第2相試験の結果が報告されました。試験は米国と日本の専門施設で実施され、61名の多系統萎縮症患者が、amlenetug群40名、プラセボ群21名に割り付けられ、4週間に1回の点滴投与を受けました。
主要評価項目は、UMSARSという症状評価スケールの経時的変化をもとに、病気の進行抑制効果を評価するものでした。結果として、事前に設定された基準には達せず、主要評価項目は達成されませんでした。
一方で、amlenetug群ではプラセボ群と比較して、臨床的な進行が約19%遅くなる可能性が示されました。現時点で確立された治療ではありませんが、αシヌクレインを標的とした疾患修飾治療につながる可能性を示す重要な研究です。
本研究には日本からも3施設が参加しており、今後の第3相試験で有効性がより明確に確認されることが期待されます。
(PDチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(26)00100-6/abstract

3.Complications, outcomes, and implications of a prolonged vegetative state in anti-NMDA receptor encephalitis: a retrospective international cohort study
Guasp M, et al. Lancet Neurol. 2026;25:368-78.

今回は抗NMDA受容体脳炎に関する論文の紹介です。意識障害が遷延する抗NMDA受容体脳炎に対しては、いつ治療不応の判断を下すべきか実臨床では迷うことが多いと思います。この論文は、抗NMDA受容体脳炎により、9ヶ月以上に及ぶ長期の植物状態(遷延性意識障害)に陥った患者の回復可能性を調査した画期的な国際共同後ろ向きコホート研究です。
45名の患者を約5年間追跡した結果、驚くべきことに全体の約3分の2がmRS2以下、約3分の1はmRS1以下を達成していました。本研究は、同疾患による長期の意識障害が必ずしも不可逆的な脳機能障害を意味しないことを示唆しています。
臨床現場や多くの研究では、治療開始から短い期間(3ヶ月以内など)で改善がみられないと「治療抵抗性」と判断されていますが、 治療抵抗性を早期に評価してしまうと、遅れて生じる改善、長期的な治療の必要性、あるいは自然回復を過小評価する可能性があります。遷延性意識障害を呈する抗NMDA受容体脳炎については、根気よく治療を継続する必要があり、治療の打ち切りは患者さん毎に個別に病状を考慮して判断する必要があると考えます。
(神経免疫チームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(26)00030-X/abstract

4.Inflammatory Myopathies.
Allenbach Y, Benveniste O. N Engl J Med. 2026;394(19):1925-1938.

11年ぶりにN Engl J Medから炎症性筋疾患のreviewが出ました。この10年で筋炎のコンセプト・診断・治療に渡り、大きく変化しました。まず、封入体筋炎、免疫介在性壊死性筋疾患、ARS症候群、結合組織疾患のスペクトラムに現れる筋炎、および皮膚筋炎に分類されるようになりました(多発筋炎・多発性筋炎という病名は存在しません!)。そして、炎症性筋疾患の大部分は、筋炎特異的自己抗体と密接に関連しており、その存在が診断・型、および予後を決定します。各筋炎のサブグループは、それぞれ異なる病態機序によって特徴づけられており、これにより現在では標的を絞った治療アプローチが可能となっています。筋炎の研究については、日本の先生方がとても貢献されてますので、ぜひご一読ください!
(平先生より)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMra2415426

一覧はこちら
最上部へ
東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科

〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8