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6月の論文まとめ

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医局SNSでは適宜論文紹介を行っております。紹介する論文は、新しい論文で医局員がオモシロイと思ったものです。
6月に紹介された論文を、コメント共に紹介します。
ご興味ある方はぜひご一読ください。

1.Standard-Dose Tenecteplase vs Low-Dose Alteplase for Acute Ischemic Stroke From Large-Vessel Occlusion: A Randomized Clinical Trial.
Inoue M, Hirano T, Fukuda-Doi M, et al. JAMA Neurol. Published online June 01, 2026.

急性期脳梗塞の経静脈的血栓溶解療法において、日本では低用量アルテプラーゼ(0.6 mg/kg)が標準治療として広く用いられています。アルテプラーゼは持続静注を必要とする一方、テネクテプラーゼはワンショットで済み、世界ではテネクテプラーゼが主流ともなりつつあります。
今回は本邦において機械的血栓回収療法(EVT)を実施する大血管閉塞(LVO)を伴う急性期脳梗塞患者に対して、標準用量のテネクテプラーゼ(0.25 mg/kg)と低用量アルテプラーゼ(0.6 mg/kg)を比較したRCTであるT-FLAVOR試験の紹介です。
対象は発症から4.5時間以内で血栓溶解療法の適応となる大血管閉塞患者で、血栓回収療法の前にテネクテプラーゼ(0.25 mg/kg、最大25mg)またはアルテプラーゼ(0.6 mg/kg、最大60mg)のいずれかを静脈内投与される群に1対1で割り当てられました。
結果、221名がランダム化され、実際に治験薬を投与された218名(テネクテプラーゼ群107名、アルテプラーゼ群111名)が解析対象となりました。主要評価項目である初回血管造影での実質的な再灌流は、テネクテプラーゼ群で10.3%(11/107名)に認められたのに対し、アルテプラーゼ群では3.6%(4/111名)でした。両群の絶対差は6.5パーセントポイント(90%信頼区間: 0.89〜12.1)であり、テネクテプラーゼ群が事前に設定された有効性の基準を満たしました。 また、90日後の機能的転帰の改善(mRSスコアのシフト)を示す共通オッズ比は1.47(95%信頼区間: 0.92〜2.35)となり、統計的有意差には至りませんでしたが良好な傾向を示しました。 安全性に関しては、24〜36時間以内の症候性頭蓋内出血の発生率(テネクテプラーゼ群2.8% vs アルテプラーゼ群1.8%)、および90日死亡率(6.5% vs 9.9%)において、両群間に有意な差は認められませんでした。
血栓回収療法前の標準用量テネクテプラーゼの投与は、低用量アルテプラーゼと比較して、安全性および機能的転帰を同等に保ちつつ、約2.9倍となる高い早期再灌流率を達成しました。これらの結果は、テネクテプラーゼが低用量アルテプラーゼの代替となり得ることを示しました。今後の動向に期待ですね。
尚、中の人もこの試験にほんの少しだけ携わらせて頂きましたので感無量です。国立循環器病研究センターの井上先生・豊田先生、杏林大の平野先生を始めとした関係各所の皆さま方、ご苦労さまでした!そしておめでとうございます!
(strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2849793

2.Beyond RBD: covert REM sleep abnormalities in Parkinson’s disease.
Lanir-Azaria, S., Nir, Y., Tauman, R. et al. npj Parkinsons Dis. 12, 90 (2026).

パーキンソン病(PD)と睡眠障害には双方向的な関連があり、特にREM睡眠行動障害(RBD)はPDやその他のαシヌクレイノパチーの重要な前駆マーカーとして知られています。
本研究では、早期・未治療PD患者25例と健常対照23例を対象に、終夜ポリソムノグラフィーと256チャネルの高密度脳波検査を用いてREM睡眠異常を検討しました。PD患者では36%に過剰なREM sleep without atoniaが認められ、REM睡眠中の後頭・頭頂部theta活動の増加や、睡眠後の運動学習改善低下との関連も示されました。
RBDはPDの重要な非運動症状・前駆マーカーですが、本研究は、RBDとして顕在化する前の潜在的なREM睡眠異常にも注目すべきことを示した興味深い報告です。
(PDチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://doi.org/10.1038/s41531-026-01295-x

3.Cerebral Amyloid Angiopathy.
Greenberg SM. N Engl J Med. 2026 May 7;394(18):1836-1845.

今週はNEJMからの脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の総説の紹介です。
CAAは、脳の小血管壁にβアミロイド(Aβ)が沈着する加齢関連疾患で、皮質・皮質下出血、脳葉型微小出血、皮質表在性鉄沈着、認知機能低下の重要な原因です。
CAAはアルツハイマー病と病理学的に近い疾患だが、Aβ沈着の主座は脳実質ではなく血管壁となります。ADではAβ42優位になる一方でCAAではAβ40優位になります。
最初の脳出血(ICH)が発症する30〜40年前から血管へのAβ蓄積が始まっており、数十年単位で進行し進行すると血管壁が脆弱化し、脳葉型脳出血を来します。
一般人口でも中等度〜重度CAAは約23%、アルツハイマー病患者では約47.5%に認められます。
主な臨床症候は、脳葉型脳出血や進行性の認知機能低下に加えて、
・TIA様だが症状が広がるように出現する一過性局所神経症状(TFNE: Transient Focal Neurologic Episodes)
・CAA関連炎症
といった時に診断に苦慮する病態もあります。
診断基準であるBoston criteria version 2.0では、50歳以上で、脳葉型出血・微小出血・皮質表在性鉄沈着などが複数ある場合、または出血性病変1つに加えて白質病変などを伴う場合に、probable CAAと診断することとなっています。
CTでの出血パターンとしては、脳葉型出血に伴うくも膜下腔への血腫進展やfinger-like projectionがCAAを示唆するとされています。
治療面で最も重要なのは、CAA関連脳出血は再発リスクが高い点です。非CAA関連脳出血の年間再発率は約1.1%である一方、脳出血CAA関連約7.4%です。心房細動など抗凝固療法の適応がある患者では、脳梗塞予防効果と出血再発リスクを個別に慎重に評価する必要があり、特にワルファリンは通常避けられ、DOAC、左心耳閉鎖、抗血小板薬単剤などを症例ごとに検討することになります。
予防としては、やはり血圧管理が重要で、二次予防では目標血圧 130/80 mmHg未満が推奨されています。
本論文では、CAA関連炎症とアルツハイマー病に対する抗Aβ抗体治療で問題となるARIAとの類似性も強調されています。CAAはARIAのリスク因子であり、抗Aβ免疫療法を行う際には微小出血や皮質表在性鉄沈着の評価が重要となります。
大変勉強になりますので、是非ご一読を!
(strokeチームより:井口教授よりおススメ頂きました)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMra2411298?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

4.Comprehensive Prestroke Risk Factor Control and Functional Outcomes After Acute Ischemic Stroke.
Kim JT, et al. Journal of the American Heart Association. 2025 Dec 9:e048491

高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動(AF)は脳梗塞の主要な危険因子です。脳梗塞発症前にこれらの危険因子がどの程度適切に管理されていたかが、脳梗塞後の機能予後に影響するかを検証した研究になります。韓国の多施設脳卒中レジストリ(CRCS-K-NIH)に登録された虚血性脳卒中患者75,815例(2011~2022年)を解析しました。各危険因子について、高血圧:降圧薬内服中、糖尿病:糖尿病治療中かつHbA1c <7.0%、脂質異常症:スタチン内服中かつLDL-C <100 mg/dL、AF:抗凝固薬内服中を「良好管理」と定義し、
Well controlled(全て管理良好)、Partially controlled(一部のみ管理良好)、Poorly controlled(管理良好な因子なし)の3群に分類しました。主要評価項目は発症3か月後のmRS 0–2(自立)です。
結果、危険因子数が1因子:転帰良好 66.0%、2因子:60.8%、3因子以上:55.0%と危険因子数が増えるほど予後は悪化しました。Well controlled群:OR 1.22(95%CI 1.15–1.29)、Partially controlled群:OR 1.14(95%CI 1.07–1.22)と、発症前管理が良好なほど3か月後自立率が高い結果となりました。日常診療での患者さんのモチベーションを高めるために有用ないい論文と感じました。「万が一脳梗塞になったときにも後遺症が軽く済む可能性がある」というのは二次予防ではインパクトのある言い方だと思います。
ただし重要なのは、この研究の「管理良好」は、実際の長期血圧や服薬アドヒアランスそのものではなく、薬剤使用や入院時バイオマーカーで定義したものである点は注意が必要です。

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.ahajournals.org/doi/suppl/10.1161/JAHA.125.048491?fbclid=IwY2xjawSt0ftleHRuA2FlbQIxMABicmlkETFSeGNsZjZ4aTFVRDNQQWxvc3J0YwZhcHBfaW

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東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科

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