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7月の論文まとめ

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医局SNSでは適宜論文紹介を行っております。紹介する論文は、新しい論文で医局員がオモシロイと思ったものです。
7月に紹介された論文を、コメント共に紹介します。
ご興味ある方はぜひご一読ください。

1.Sarcopenia, Grip Strength, Walking Pace, and New-Onset Stroke Risk: A UK Biobank Study
Stroke. 2026;57:1574–1585.

今回は、サルコペニア・握力・歩行速度と新規脳卒中発症リスクの関連を検討したUK Biobank研究です。
対象はベースラインで脳卒中既往のない482,699例。平均年齢は56.4±8.1歳、男性45.4%で、中央値13.77年追跡されました。追跡期間中に11,814例の脳卒中が発症し、その内訳は脳梗塞9,449例、脳出血2,029例でした。
EWGSOP2基準に基づき、低握力をprobable sarcopenia、さらに筋量低下を伴うものをconfirmed sarcopeniaと定義しています。probable sarcopeniaは22,523例(4.7%)、confirmed sarcopeniaは2,037例(0.4%)でした。
多変量調整後、probable sarcopeniaはサルコペニアなしと比較して、全脳卒中、脳梗塞、脳出血のいずれともリスク上昇に関連していました。
・全脳卒中:aHR 1.30
・脳梗塞:aHR 1.31
・脳出血:aHR 1.41
confirmed sarcopeniaでは、全脳卒中と脳梗塞のリスク上昇が認められました。
・全脳卒中:aHR 1.42
・脳梗塞:aHR 1.57
・脳出血:aHR 1.07
また、握力低下・歩行速度低下も脳卒中リスクと関連していました。握力が5kg低いごとに全脳卒中リスクは7%上昇し、歩行速度がslow paceの群ではbrisk paceの群と比較して全脳卒中リスクが64%高い結果でした。
・握力低下:aHR 1.07 / 5kg低下
・slow walking pace:aHR 1.64
・average walking pace:aHR 1.10
さらに、脳卒中発症後の死亡率もサルコペニアの程度に応じて高い傾向を示しました。全脳卒中患者では、死亡率はサルコペニアなし33.5%、probable sarcopenia 41.6%、confirmed sarcopenia 48.8%でした。
本研究から、握力や歩行速度は、単なる加齢の指標ではなく、脳卒中リスクや脳卒中後予後を反映する全身状態のマーカーである可能性が示唆されます。
特に歩行速度は、筋力だけでなく、心肺機能、代謝、フレイル、神経機能などを反映する総合的な指標かもしれません。日常診療で「歩くのが遅くなった」「握力が弱い」といった情報に注目することは、脳卒中予防の観点からも重要と考えられます。(strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.125.052311

2.Co- and Multi-Pathologies in Parkinson’s Disease: An International Parkinson and Movement Disorder Society
Matarazzo M, Borghammer P, Elsayed I, Goldman JG, Huang Y, Lohmann K, Svenningsson P, Kalia LV, Berg D, Kordower JH; MDS Scientific Issues Committee.
Mov Disord. 2026 May 22. doi: 10.1002/mds.70324. Online ahead of print

パーキンソン病(PD)の病態進展は、α-シヌクレインの蓄積と伝播が中心的な機序と考えられています。しかし実際は、α-シヌクレインの進展だけでは十分に説明できない多様な臨床像や疾患進行が認められます。
本論文では、多くのPD患者がα-シヌクレイン病理に加えて、Aβ、タウ、TDP-43などの併存病理(co-pathologies)を有しており,これらの複合的な病理が症状や疾患進行の多様性に影響を与える重要な要因であることが解説されています。
特に、タウ病理は約半数以上のPD患者に認められ、認知機能低下との関連が示されています。また、アルツハイマー病に特徴的なAβ病理は加齢とともに頻度が増加し、PDD(Parkinson‘s disease dementia)やレビー小体型認知症では高率に認められます。
今後、各病理を評価するバイオマーカーが実用化されれば、患者ごとの病態に応じた個別化医療や、適切な疾患修飾療法の実現に寄与することが期待されます。
(PDチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://movementdisorders.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mds.70324

3.Midline Shift and Hemorrhagic Transformation Undermine the Benefit of Thrombectomy in Patients With Large Ischemic Core.
Ng FC et al. Stroke. 2026 Jun;57(6):1492-1500.

脳浮腫は、広範囲に梗塞が及んでいる患者に大きな影響を与える、虚血性脳卒中の致命的な合併症です。本研究は、大きな虚血コア(梗塞巣)を持つ患者において、血管内治療(EVT)による脳浮腫への影響を評価したSELECT-2試験のサブ解析です。
対象は、発症から24時間以内の前方循環の大血管閉塞(LVO)で、大きな虚血コア(ASPECTS 3〜5、またはCT灌流画像・MRI拡散強調画像でのコア体積が50 mL以上)を呈する成人患者です。患者は、EVTと内科的治療を併用する群と、内科的治療のみの群にランダムに割り当てられました。ランダム化から7日以内のフォロー画像におけるミッドラインシフト(MLS)を測定し、両群間で比較しました。
結果、フォローアップ画像撮影前に減圧開頭術を受けた10名を除外した、合計342名の患者を解析対象とし、 フォロー画像におけるMLSの中央値は、内科的治療群が4.18 mmであったのに対し、EVT群では6.39 mmであり、EVT群で有意に大きくなりました(P=0.021)。また、5 mm以上のMLS(悪性中大脳動脈梗塞の画像所見)を認めた割合も、内科的治療群の43.6%に対し、EVT群で56.4%と有意に高い結果でした(P=0.021)。年齢とベースラインのコア体積を調整した後の解析でも、EVTはより大きなMLSと独立して関連していました(調整オッズ比  1.63 [95% CI, 1.25–2.12]、P=0.0027)。
MLSの増大は、24時間以内の早期神経症状増悪(ENW)の発生(調整オッズ比 1.15、P<0.001)、および90日後の機能的予後(mRSスコア)改善の可能性の低下(調整オッズ比 0.96、P=0.0029)と関連していました。脳浮腫が発生することによって、EVTがもたらす機能的予後改善の効果が10.1〜10.6%減少したことが示されました。
EVTにより脳浮腫が軽減できるのではないかという期待もありましたが、大きな虚血コアを持つ患者に対するEVTは、脳浮腫の増加と関連していることが明らかになりました。今後はどの段階の灌流低下なら「脳浮腫を起こさず再灌流を得られる」のかが重要になってくるのでしょうか。
(strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.125.054015

4.Discontinuation of First-Line Disease-Modifying Therapy in Patients With Stable Multiple Sclerosis: The DOT-MS Randomized Clinical Trial.
Coerver EME, et al. JAMA Neurol. 2025 Feb 1;82(2):123-131.

JAMA Neurology誌の「Clinical Trial of the Year」に選出された論文の紹介です。5年以上臨床・画像的に病勢が完全に安定している多発性硬化症(MS)患者において、疾患修飾薬(DMT)の中止が安全かを検証したDOT-MS試験。中止群では17.8%(8/45例)で臨床的再発(主にMRI上の新規病変)が発生したのに対し、継続群では再発は0%(0/44例)でした。安全性の閾値を超えたため、追跡中央値15.3か月で試験は早期終了に。長期安定期や比較的中年の患者であっても、安易なDMT中止は病勢再燃リスクを伴うことを示す極めて重要な臨床エビデンスと考えます。(神経免疫チームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2827731

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東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科

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