Research/研究

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研究部門

免疫疾患研究グループ

臨床における取り組み

 神経免疫チームでは、重症筋無力症、多発性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害といった自己免疫疾患に対して、副腎皮質ステロイドパルス療法、大量ガンマグロブリン静注療法、血液浄化療法などの急性期治療を早期に実施し症状の改善を図るとともに、生物学的製剤や免疫抑制剤を用いた再発予防を行っています。
 近年、新たな生物学的製剤が数多く登場しており、患者さん一人ひとりの病態に応じた疾患修飾薬を選択するテーラーメイド医療が可能になっています。
 当チームでは、重症筋無力症に対してラブリズマブをはじめとする最新の分子標的治療薬を活用し、再発予防および症状のコントロールを目指しています。また、多発性硬化症の患者さんにも個別の病態に合わせ、オファツムマブやナタリズマブを含む新規疾患修飾薬を積極的に活用しています。さらに、視神経脊髄炎スペクトラム障害の抗AQP4抗体陽性の患者さんに対しても、エクリズマブやサトラリズマブなどの生物学的製剤を病状に応じて導入しています。
 また、入院中および外来診療を通じたShared Decision Makingにより、患者さんが安心して治療を継続できるよう支援しています。
 神経免疫疾患は生涯にわたって免疫抑制が必要な疾患であり、当チームでは患者さんの一生を通じて生活の質の維持と向上を目指しています。

研究活動

 当チームでは、臨床と並行して、神経免疫疾患に関する臨床研究を行っています。特に重症筋無力症、多発性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害、および新型コロナウイルス感染症関連脊髄炎に焦点を当て、病態、画像診断、疾患の進行を予測するバイオマーカーの探索に取り組んでいます。これらの研究成果は国内外の学会で積極的に発表し、論文発表も行っています。
 また、学会への参加を通じて得られた最新の知見をチーム内で共有し、日々の診療と研究に役立てています。
 日々の臨床経験と研究活動を通じてお互いに切磋琢磨し合い、疾患メカニズムのさらなる解明を進めるとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるような新たな知見の探索を目指しています。

免疫疾患

神経変性疾患研究グループ

包括的なアプローチで挑むパーキンソン病診療と研究

臨床における包括的な取り組み

神経変性疾患

 当グループでは、パーキンソン病関連疾患が疑われる患者様に対し、独自の診療アプローチを実践しています。症状が顕在化した初期の段階、まだ治療介入のない(naive)時点で短期精査入院を行い、病態の包括的評価を実現。自律神経機能検査、認知機能評価、嗅覚検査、錯視現象の分析、心理アンケートによる精神症状評価、さらに血液・髄液の生化学的分析など、多角的な検査を通じて正確な診断と最適な治療戦略の構築に取り組んでいます。また、疾患の進行期においては、個々の患者様の状態に応じた薬剤調整や最新のデバイス補助療法導入のための専門的入院加療を提供しています。急速に多様化する治療選択肢の中から一人ひとりの患者樣に最適なオプションを提案し、QOL向上を目指した先進的医療を実践しています。

臨床と基礎を融合した研究

 当グループの強みは、診療と研究の緊密な連携にあります。精査加療中に得られる詳細な臨床情報を体系的にデータベース化し、自律神経機能障害の解析、高度な神経画像技術を用いた解析、神経炎症メカニズムの解明など、多角的アプローチによるパーキンソン病関連疾患の病態研究を展開しています。さらに、再生医学研究部との協働により、分子レベルから臨床症状までを網羅する総合的な研究基盤を確立しています。臨床観察と基礎科学の知見を融合させることで、パーキンソン病の本質に迫る研究を推進しています。研究成果は、日本神経学会やMovement Disorder Societyなどの権威ある国際学会で定期的に発表し、国内にとどまらず海外の研究者との学術交流を行っています。査読付き国際誌への論文発表を通じて、日本発の新知見を世界に発信し続けています。

神経変性疾患 神経変性疾患 神経変性疾患

脳卒中研究グループ

臨床における取り組み

 24時間365日脳卒中救急患者を受け入れており、積極的にアルテプラーゼ静注療法、機械的血栓回収療法を行なっています。院外・院内発症脳梗塞の転帰を改善するため、チーム医療で発症から治療までの時間短縮への取り組みを行っており、ストロークコーディネートナースやスマートフォン用ICTアプリケーション(JOIN®)、院内多職種レクチャー、シミュレーション教育を行なっています。また、脳梗塞の病型診断、塞栓源検索のために超音波を駆使して診療をしています。特に経頭蓋超音波の検査件数は日本でもトップクラスを誇り、右左シャントスクリーニングとしてマイクロバブル法によるコントラストエコー評価を数多く行なっています。

脳卒中

ICTアプリケーション(JOIN®)

脳卒中

経頭蓋超音波によるマイクロバブル法で右左シャントを介して中大脳動脈で認められたコントラスト剤由来の微小栓子信号

研究活動

 脳卒中患者の詳細なデータベースを構築し、豊富な臨床データを基にレジストリー研究を推進しています。慈恵脳卒中レジストリー研究は2012年から開始し、すでに3600例の症例を登録しています。レジストリー研究は、日頃の臨床疑問について解析することが出来るため、学生や研修医でも取り組みやすく、やる気があればすぐに若手でも指導医の元で研究をすることができます。また、このデータベースを活用し、日本神経学会や日本脳卒中学会などの国内学会に加え、国際脳卒中学会(ISC)にも毎年多くの演題を発表し、積極的に研究成果を発表し、多数の論文を投稿し採択されています。

 さらに非弁膜症性心房細動患者に対するカテーテルアブレーションの有用性を検証するSTABLED試験や、プラスグレルのクロピドグレルとの血小板凝集能の比較研究であるACUTE–PRAS試験など複数の多施設共同研究を実施しました。 また、『間葉系幹細胞を含有したX線視認性ファイバーによる脳梗塞カテーテル治療』、 『抗フィブリン抗体と変異ウロキナーゼの融合体による急性期脳梗塞に対する新規血栓溶解剤の開発』などの基礎研究や、『頸部貼付型超音波を用いた卵円孔開存の診断と閉鎖術中モニタリング』といった超音波を用いた臨床研究なども精力的に行なっています。

脳卒中

ISC2025での発表

脳卒中

頸部貼付型超音波を用いた
卵円孔開存閉鎖術中モニタリング

嚥下障害研究グループ

メンバー:〇谷口洋、宮川晋治(〇が責任者)

はじめに

 脳神経内科は脳血管障害から変性疾患まで、中枢神経疾患から筋疾患まで様々な疾患を診療しています。これらの疾患の多くは進行期に嚥下障害をきたします。そして、嚥下障害は誤嚥性肺炎や窒息につながるので重要な予後規定因子の一つとなります。また、「口から食べること」は喜びの一つであり、嚥下障害から経口摂取が不能となることは、QOLの低下につながります。
 神経疾患の嚥下障害はその原因疾患の性質を考慮して対処する必要があります。しかし、嚥下障害の診療・研究を専門とする脳神経内科医は非常に少なく耳鼻咽喉科やリハビリテーション科にお願いしているのが現状です。原因不明の嚥下障害を診断する際には、嚥下障害以外の随伴する神経学的所見の存在が手掛かりとなることも多く、脳神経内科の視点が必要です。
 私たちは、脳神経内科医の視点から嚥下障害の病態を解析し、診療や研究の発展に貢献することを目指しています。

グループの目標

  1. 神経筋疾患における嚥下障害の特徴を明らかにする。
  2. 嚥下障害のパターンを解析し、それぞれのパターンに対する代償法を検討する。
  3. 神経筋疾患における上気道閉塞の特徴と対処法を明らかにする。

臨床の実際

 嚥下障害の評価は嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を組み合わせておこないます。嚥下内視鏡検査は耳鼻咽喉科やリハビリテーション科で施行されることが多いですが、神経疾患特有の嚥下障害を詳細に評価するために、私たちは自ら検査を施行しています。これにより嚥下機能の変化を継続的に追跡し、個別化した治療計画を立てることができます。また嚥下障害の代償法(食形態の調整や体位の調節)は言語聴覚士や看護師とも連携して検討します。

嚥下障害

嚥下造影検査

嚥下障害

嚥下内視鏡検査

嚥下障害

嚥下代償法の一例:左頬杖位で左咽頭へ食塊を誘導
(帯状疱疹による右迷走神経麻痺)

 嚥下障害を呈する神経疾患では、上気道閉塞の評価も重要な課題です。たとえば多系統萎縮症における声帯外転障害、球脊髄性筋萎縮症における喉頭攣縮などの神経疾患特有の上気道閉塞も喉頭内視鏡検査で評価しています。特に、多系統萎縮症における声帯の奇異性運動やfloppy epiglottisは覚醒時に観察されず、入眠時に顕在化することも多いため、薬物鎮静下での評価を行っています。これらの所見は陽圧換気療法の適応を考える場合や、胃瘻造設時のリスク管理の際に重要です。脳神経内科医が自ら評価できることは大きな強みと言えるでしょう。

嚥下障害
嚥下障害

多系統萎縮症におけるfloppy epiglottis:呼気時の喉頭蓋は異常なし。吸気時に喉頭蓋が後方に倒れこみ、上気道を閉塞する

学会活動

 ご存じない方も多いと思いますが、嚥下障害に関する学会が幾つかあります。
 本邦には耳鼻咽喉科医が主体の日本嚥下医学会、リハビリテーション科医が主体の日本摂食嚥下リハビリテーション学会、脳神経内科医が主体の日本神経摂食嚥下・栄養学会などがあります。海外ではDysphagia Research society (DRS), European Society for Swallowing Disorders (ESSD)が有名です。私たちは忙しい臨床の合間をぬって、これらの学会に参加して、研究の成果を発表しています。
なお、2028年の日本嚥下医学会学術講演会は、私たちが21年ぶりに開催する予定です。

嚥下障害
嚥下障害

若手医師へのメッセージ

 嚥下障害は神経筋疾患における重要な症状の一つですが、その診療に携わる医師の多くは耳鼻咽喉科やリハビリテーション科です。神経疾患に伴う嚥下障害を専門的に診療できる脳神経内科医は非常に希少です。脳神経内科医だからこそ理解できる病態があり、治療法の開発や診療の標準化に貢献できる可能性があります。
 「脳神経内科の視点で嚥下障害を診ることができる希少な専門医」として、私たちと一緒に研究して、患者さんの予後改善やQOLの向上に貢献してみませんか?

臨床神経生理研究グループ

臨床における取り組み

臨床神経生理

 脳神経内科領域の中で神経・筋疾患は、神経変性疾患、免疫疾患、遺伝性疾患など多岐にわたり、症候が複雑で、診断が困難な疾患が多くあります。当グループでは、脳神経内科の真髄である神経学的診察と臨床神経生理検査(神経伝導検査、針筋電図検査)により症状の本質を明らかにし、バイオマーカー、画像検査(神経・筋エコー、MRI)、病理学的検査(神経生検、筋生検)、遺伝学的検査と合わせて正確な診断を行っています。附属病院および富士市立中央病院は神経伝導検査、針筋電図の専門医・指導医が常勤で所属しており、日本臨床神経生理学会より教育施設の認定を受けています。近年、神経・疾患領域では新規治療が多く開発されているため、早期に正確な診断をすることで、少しでも早く治療につなげていくことで、診療に貢献していきたいと考えています。

臨床神経生理

研究活動

 当科では、これまで数多くの臨床神経生理検査を行ってきました。また、帝京大学との他施設共同研究への参加、日本臨床神経生理学会への発表を通して新たな知見を発信してきました。さらに、2024年度より本学の附属病院、分院、関連病院全体で研究グループを発足させ、手技の標準化、データベースの構築により、質の高い研究を目指しています。また、神経学的診察、臨床神経生理検査は個々の医師の手技が診療の質に大きく関わってきますので、教育、人材育成にも力を入れています。

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東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科

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