多発性硬化症において視床が萎縮することは以前から知られていますが、萎縮に関する病態は未だ明らかではありません。今回紹介する論文は、死後脳の視床をMRIと免疫組織化学染色で解析することで、視床内側と後方が前方と外側に比べてより高度に萎縮していること、病態として脱髄よりもミクログリアの密度増加、形態学的複雑化、シナプス貪食能の亢進といった表現型の変化が関連していると報告しています。著者らは、視床萎縮のメカニズムとしてtwo-hit modelを提唱しています。まず、白質の変性、軸索損傷によるワーラー変性が生じ(第1のhit)、局所の髄液因子によりミクログリア応答が過剰に活性化(第2のhit)することで、視床の萎縮が促進されるというものです。ミクログリアが原因か結果か、議論は未だ残りますが、視床の萎縮とミクログリアに焦点を当てた点においてこの論文は画期的であり、今後BTK阻害薬等との関連も注目されます。(神経免疫チームより) Thalamic atrophy in multiple sclerosis is associated with tract disconnection and altered microglia. Rodriguez-Mogeda, C., Koubiyr, I., Prouskas, S.E. et al. Acta Neuropathol 149, 52 (2025).
Collaboration on the optimal timing of anticoagulation after ischaemic stroke and atrial fibrillation: a systematic review and prospective individual participant data meta-analysis of randomised controlled trials (CATALYST) Dehbi, Hakim-Moulay et al. Lancet, 406; 10498, 43-51
パーキンソン病の原因に「腎臓」が関係? これまで、腎機能障害のある患者ではパーキンソン病(PD)の発症率が高いことが知られていましたが、その理由は不明でした。今回、中国からPDの病態進展に関する新たな知見が報告されました。 PDや末期腎不全の患者の腎臓には、α-シヌクレイン(α-Syn)が沈着していることが確認されました。さらに、腎不全マウスにα-Synを静脈投与すると、腎臓と脳へのα-Syn沈着が促進されました。また、腎臓内にα-Synフィブリルを注入すると、腎臓から脳へとα-Syn病理が広がりました。ただし、腎臓の神経を切断すると、この広がりは抑制されました。このように、腎臓がパーキンソン病の病因となる異常タンパク(α-Syn)の発生源になる可能性が示唆されています。今後の研究の進展に注目です。(PDチームより) Propagation of pathologic α-synuclein from kidney to brain may contribute to Parkinson‘s disease.Xin Yuan, et al. Nature Neuroscience 2025. 28: 577–588