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10月の論文紹介まとめ

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医局SNSでは適宜論文紹介を行っております。紹介する論文は、新しい論文で医局員がオモシロイと思ったものです。
10月に紹介された論文を、コメント共に紹介します。
ご興味ある方はぜひご一読ください。

1.Effect of Perforator Territory Infarction on Functional Outcome in Patients With Large Vessel Occlusion.
Sadigh, Yasmin et al. Stroke. 19 Sep. 2025.
doi:10.1161/STROKEAHA.125.051745

前方循環LVOに対する血栓回収療法後に生じる穿通枝領域梗塞と機能予後との関連を検討した研究になります。
オランダで行われたMR CLEAN-MED試験およびMR CLEAN-NO IV試験のデータを用いて、2018年1月〜2021年1月に前方循環LVOで血栓回収療法を受け、治療後24時間以内にMRIが施行された患者397例を対象とし、①皮質群、②穿通枝+島皮質群、③両者群の3群に分類しました。
主要評価項目は24時間後のNIHSSスコア、副次評価項目は90日後のmodified Rankin Scale(mRS)です。
穿通枝領域梗塞と24時間後のNIHSSは関連ありませんでしたが、穿通枝領域梗塞を有する患者は90日後の機能予後が不良でオッズ比は2.94(95% CI, 1.73–4.98)でした。
24時間後に関連せず3か月後のmRSに関連する理由として、皮質症状は伴わないからNIHSSで過小評価されるが、機能自立には重大な影響がでるとあります。近位部が閉塞すれば虚血は免れないように思いますが,面白いことにM1閉塞でも14%の症例で穿通枝領域の虚血が生じていません。時間の関係ももちろんあると思いますが,M1からの分岐部位やleptomeningealから回り込んでくる血流,その他の何らかのコラテなどがあるのかもしれません。
この話題、昨年度に当科内でも話題になって解析したいと思っていたネタでした。鉄は熱いうちに打てですね。。。(Strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.125.05174505/

2.Childhood Loneliness and Cognitive Decline and Dementia Risk in Middle-Aged and Older Adults.
Wang J, Jiao D, Zhao X, et al. JAMA Netw Open 2025;8:e2531439

「成人における孤独」は、その後の認知機能低下の危険因子になることが先行研究で判明していますが、「幼少期における孤独」も「成人期における孤独の有無に関わらず、中高年期での認知機能低下の危険因子になる」ことを示しています。人間はやはり、「社会的動物であり、常に社会と関りを持ち生きることが認知機能に大事である」ことを強く示した結果のようです。 (PDチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40938598/

3.Optimal Antithrombotics for Ischemic Stroke and Concurrent Atrial Fibrillation and Atherosclerosis: A Randomized Clinical Trial.
Okazaki S, Tanaka K, Yazawa Y, et al.  JAMA Neurol. Published online October 06, 2025. doi:10.1001/jamaneurol.2025.3662

発症8日目以降の脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)を有し、心原性脳塞栓症の原因となる非弁膜症性心房細動(NVAF)と、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を併存する患者において、抗凝固薬単剤療法(OAC単剤)と抗凝固薬+抗血小板薬の併用療法の臨床的有益性を比較したATIS-NVAF試験になります。
日本国内41施設を対象としたランダム化比較試験です。
316例(併用群159例、単剤群157例)を対象とし、主要評価項目である虚血イベント+大出血の発生率は併用群17.8%、単剤群19.6%(HR 0.91, 95%CI 0.53–1.55, P=0.64)でした。
虚血性心血管イベントは併用群11.1%,単剤群14.2%,HR 0.76(95%CI 0.39–1.48, P=0.41)で有意差がない一方、大出血および臨床的に重要な非大出血は併用群19.5%,単剤群8.6%,HR 2.42(95%CI 1.23–4.76, P=0.008)で有意に増加しました。
脳梗塞/TIA後にNVAFとASCVDを併存する患者において、抗血小板薬の追加は抗凝固薬単剤に比べて臨床的利益をもたらさず、出血リスクを増加させた、ということになります。
心原性脳塞栓症の患者でアテローム病変を有する場合、抗血小板薬を追加するかどうかは臨床でいつも迷う点です.この試験は全例が日本人で,DOACが94%ですので,すぐに臨床応用できる点が素晴らしいですね。
同様のアテローム性病変+NVAFにはAFIRE試験・EPIC-CAD試験があります。
これらの試験は冠動脈疾患+NVAFですが,同様に抗凝固単独が有利な結果でした.一貫した結果であり,慢性期の二次予防は単剤使用を基本とするのが良さそうですね。
一方で脳梗塞急性期(7日以内)や,ASCVD側の重症度によっては抗血小板薬が切りにくい症例もあるかと思います.そうした場合には左心耳閉鎖で抗血小板薬単剤へ変更する選択肢もありかもしれません。(Strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/article-abstract/2839511

4.Subunit-Specific Immunodominance in Clinically Distinct Populations With AChR+ Myasthenia Gravis.
Oved K et al. Neurology. (2025) e214150.

今月は重症筋無力症に関する文献の紹介です。
AChRはα₂βδε(成人型)およびα₂βδγ(胎児型)の2種のアイソフォームから構成されます。
この論文では、各サブユニット(α、β、γ、δ)に対する抗体の相対的比率を定量したところ、従来病原性とされてきた抗αサブユニット抗体よりも、抗γサブユニット抗体の方が優位な症例が多いことが分かりました。
特に女性ではγ優位、男性ではα優位が多く、βやδでは差がありませんでした。抗γサブユニット抗体優位は抗体価の高い症例ほどこの傾向が強く、重症(MGFA IV–V)例に顕著でした。このγ優位性は女性に特徴的であり、抗体価や重症度と強い相関を示しました。さらに主成分分析(PCA)により、患者群は2つの「エンドタイプ(endotype)」に分類されました。
エンドタイプA:若年女性、EOMG、γ優位、高抗体価、胸腺過形成、多くが中〜重症。エンドタイプB:男性・高齢者中心、LOMG、α優位、低抗体価。この論文により、性別、年齢、サブユニットに対する抗体パターン、胸腺異常が組み合わさった病態クラスターが初めて示され、患者の予後予測と治療戦略の層別化に貢献することが期待されます。
(神経免疫チーム)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000214150

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東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科

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