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3月の論文紹介まとめ

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医局SNSでは適宜論文紹介を行っております。紹介する論文は、新しい論文で医局員がオモシロイと思ったものです。
3月に紹介された論文を、コメント共に紹介します。
ご興味ある方はぜひご一読ください。

1.A Randomized Trial of Tenecteplase  in Acute Central Retinal Artery Occlusion.
Ryan SJ, et al. N Engl J Med 2026;394:442-50.

中心網膜動脈閉塞症(CRAO)は突然の片眼性失明をきたす眼科的緊急疾患であり、有効な標準治療は確立されておりません。本試験はCRAOに対するテネクテプラーゼ(TNK)静注療法の有効性と安全性を検討した第3相無作為化比較試験です。
対象は発症4.5時間以内の非動脈炎性CRAO成人患者78例で、テネクテプラーゼ静注(0.25 mg/kg)+内服プラセボ群とプラセボ静注+アスピリン300 mg内服群で比較を行いました。
結果、30日後の視力回復率はテネクテプラーゼ群:20%(8/40)、アスピリン群:24%(9/38)P=0.69で有意差はありませんでした。有害事象はテネクテプラーゼ群で多い傾向にあり、症候性頭蓋内出血が1例ありました。
CRAOは対応に苦慮することが多く眼科に受診しても有効な手立てが少ないのが現状です。
本試験では78%が3時間以内にTNKを使用されているにもかかわらず効果を示せていないことが重要です。
考察では虚血の進行が極めて速い、溶けにくい血栓が飛んでいる可能性、などが考えられています。
なお、昨年発表されたアルテプラーゼを使ったRCT(THEIA試験)でも有効性は示せていません。今後のメタ解析を待ちましょう。
*なお、日本ではCRAO/BRAOにアルテプラーゼの適応は通っていませんので、投与することはできません。
(strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41604638/

2.Beyond the Brain: Exploring the multi-organ axes in Parkinson’s disease pathogenesis.
Liu T, et al. J Adv Res. 2026 Feb;80:451-474. doi: 10.1016/j.jare.2025.05.034.

パーキンソン病(PD)を黒質ドパミン神経変性に限定せず、lung・liver・heart・muscle・bone・gut の6つの臓器‐脳軸から成る全身性ネットワーク疾患として再構築した包括的総説です。各軸に共通する中核機序として、慢性炎症(TNF-α, IL-6)、酸化ストレス、BBB透過性亢進、HPA軸異常、ミトコンドリア障害、さらに mTOR・JAK/STAT・Wnt/β-catenin などのシグナル異常を提示し、これらがαシヌクレイン凝集・神経細胞死を増幅する統合モデルを示しています。
腸‐脳軸では dysbiosis と腸管バリア破綻、迷走神経経由のα-syn伝播を早期病態仮説として整理し、肺では神経内分泌細胞やマクロファージ由来炎症がBBBを介して中枢炎症を誘導する可能性を論じています。
肝‐脳軸では解毒機能低下や脂質代謝異常、CYP活性変化、mTOR調節異常が神経毒曝露や自噬障害を介して神経変性を増悪させるとし、心‐脳軸では自律神経障害と慢性脳低灌流が酸化ストレスを惹起すると位置付けています。
さらに筋由来マイオカイン(BDNF, irisin)低下や骨由来ホルモン(osteocalcin)変化も神経可塑性・炎症制御に関与すると整理し、PDを「多臓器クロストークの破綻」と捉え、単一標的ではなく全身統合的疾患修飾戦略の必要性を提唱しています。(PDチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12869220/

3.Comparative Effectiveness of Disease-Modifying Treatments in Double Seronegative Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder.
Mahler JV, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2026;13:e200514.

今月は視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に関する文献の紹介です。AQP4抗体およびMOG抗体の両方が陰性であるDouble Seronegative NMOSD(DS-NMOSD)に対しては、承認された再発予防薬が存在せず、経験的な治療として様々な免疫療法が用いられているのが現状です。この研究は、DS-NMOSDにおいてどの薬剤を選択すべきか、6カ国103名の患者データを縦断的に解析した報告です。特筆すべきは、CBA法で厳密に抗体陰性を確認している点です。結果はCD20抗体療法の有効性が示されました。リツキシマブ等のCD20抗体療法は、incidence rate ratio(IRR)が0.02、annualized relapse rate(ARR)を0.17まで低下させたのに対し、アザチオプリン等の非特異的免疫抑制薬(NSIS)を使用した場合のIRRは0.09、ARRは0.76にとどまり、MS治療薬を用いた場合ではIRRが0.13、ARRは1.07と効果不十分でした。本知見は、抗体陰性例であってもCD20抗体療法がファーストライン治療となる可能性を示しており、今後の治療戦略のトレンドを注視する必要があると考えます。(神経免疫チームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

4.Effectiveness of Levetiracetam vs Valproic Acid for Poststroke Seizure: A Population-Based Study Using a Target Trial Emulation Framework.
Huang HY, Wang CC. et al. Neurology. 2025 Nov 25;105(10):e214319.
doi: 10.1212/WNL.0000000000214319.

脳卒中後のてんかん発作は一般的な合併症であり、その発作がコントロール不良な場合、生活の質の低下や機能的転帰の悪化、全死亡リスクの増加につながるため、適切な抗てんかん薬(ASM)による治療が重要です。新世代の抗てんかん薬であるレベチラセタムは、バルプロ酸などの古い世代の薬に比べて薬物相互作用や副作用が少なく、安全性や動態が安定しているという利点があります。しかし、脳卒中後のてんかん発作管理において、レベチラセタムとバルプロ酸の有効性を直接比較したデータは限られているため、本研究ではこの2剤におけるてんかんによる再入院リスクを比較・評価することを目的としています。
今回は台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いた観察的後ろ向きコホート研究であり、「標的試験エミューレーション(target trial emulation)」という方法で分析を行いました。
2012年1月1日から2020年12月31日までに、初めててんかん発作(指標発作)で入院し、退院前にレベチラセタムまたはバルプロ酸の単剤投与を新規に処方された18歳以上の患者を対象としました。また、発作前の2年以内に脳卒中での入院歴があることを条件としました。最初に処方された薬に基づいて、患者をレベチラセタム群とバルプロ酸群に割り当てました。
主要評価項目を「てんかんによる再入院」、副次評価項目を「全死亡」および「てんかんによる再入院と全死亡の複合」とし、ベースラインおよび時間とともに変化する交絡因子を調整するために逆確率重み付け(IPW)周辺構造モデルを使用して分析しました。
条件を満たした患者は合計1,526人でした。そのうちレベチラセタム群が740人(48.5%)、バルプロ酸群が786人(51.5%)であり、両群とも平均年齢は67.2歳でした。主要評価項目であるてんかんによる再入院に関してはレベチラセタム群でバルプロ酸群と比較しててんかんによる再入院のリスクが有意に低いことが示されました(HR 0.78(95%CI 0.64–0.95、p = 0.01)でした。副次評価項目である 「全死亡」のリスク(HR 1.09; 95% CI 0.92–1.30、p = 0.31)および、「てんかんによる再入院と全死亡の複合リスク」(HR 0.92; 95% CI 0.80–1.06、p = 0.24)については、両群間で統計的に有意な差は認められませんでした。
感度分析ではレベチラセタムは、別の薬への切り替えや追加といった「抗てんかん薬のレジメン変更」リスクを有意に低下させました(HR 0.66; 95% CI 0.57–0.77、p < 0.001)。
以上よりレベチラセタムは、死亡リスクを増加させることなく、てんかんによる再入院のリスクを減少させることから、脳卒中後のてんかん発作に対する適切な治療選択肢であることが支持されます。レベチラセタムはバルプロ酸より副作用が少ない印象であり、その結果適切な用量を使用することができ、てんかん発作の再発を抑えられたということでしょうか。
また、本研究は「標的試験エミューレーション」という枠組みを用いています。これは後ろ向き観察研究においてRCTを模倣するように患者群を設定し比較することで、リアルワールドデータでバイアスをなるべく少なくして因果推論することを可能としたものです。統計解析の方法も日進月歩だと感じますね。(strokeチームより)

※詳細は以下のリンク先をクリックしてご覧ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41183250/

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東京慈恵会医科大学 内科学講座 脳神経内科

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